第16回:アースって何?(01/06/06)

―シリーズの最後は、聖なる大地のお話です。―

  アースと言うと一冊の本になる程のテーマなので、難しい話は専門家に任せ、ちょっとのぞいて見る位の話をしましょう。

  元々の言葉は、アース=EARTH=地球 のことなんですが、電気の場合は「接地」と訳して、電気の線を地面や建物の鉄骨や金属製ケース(筐体:キョウタイ=外箱)につなぐことを指します。 電気回路の専門家の間では「グランド」という言葉を使うときもあります。
  さて皆さん、家の電気製品を買ったときに、消費電力の大きいものやデリケートな機器には「必ずアースを取ってください」と書いてあるのをご存知ですね。 例えばエアコンなどはかなり電気を食うので、わざわざ接地工事しなくてすむように普通のコンセントと違う三本足のコンセントが使われます。 電源用の二本とは別にアース用の線が入っていて、最終的に家中のアース線を一ヶ所に集めて地面に埋め込んだ銅の棒などにつながっています。 と言うことは、もし地球が電気を通すものなら、自分の家のアース線も地球の裏のよその国の家のアース線も結局は電気的につながっている事になりますね。 もしこの地球を基準電圧:0ボルトに決めてしまえば、世界共通の物差しに使えてとても都合が良くなります。 山の高さや海の深さを表す海抜とよく似ています。
  ところで皆さん、地球って電気をよく通す良導体でしょうか? 試しにテスターで地面の抵抗を測ってみると、土や石ころですからずいぶん抵抗が大きいですね。 だとすれば電流が流れたときにどこでもいつでも「0ボルト」と言う理屈はおかしいですね。 確かにその通りで、実際には時間や場所で電圧は違っています。 なのになぜ基準と言えるのでしょうか? 先の海抜でも潮の満ち引きや波の影響で水面の高さは常に変化してますが、それほど大きいものではないので平均高さ:0メートルと決めれば実用的に十分であり、電気の場合も似たようなものと考えてかまいません。 とは言えアース線と地面の間の電気抵抗(接地抵抗)はそこそこ小さくないと役に立ちませんから、埋め込んである銅の棒はかなり長く深く差し込んでできるだけ接触面積を確保してあります
  補足ながら、電力会社から送られてくる交流電源は基準の線を元の方でアースしてあるので、地面に対しての電圧は全国どこでも一定です。 また電源用の線(三相の場合は赤、白、黒)と区別するためにアース線は一般に緑色のコードを使う約束になっています。

では一体何のためにアースを取るのでしょうか。
大きく分けて、1.人の保護 2.機器の保護 3.動作障害の防止 の三つが有ります。
  1と2はどちらも異常電流による事故の防止です。 地面と直接間接に接している多くの建物や人などは突き詰めれば、電気抵抗の大小に応じて幾分かは地面と電気的につながってますから、近くにある機器が何かの異常で漏電を起こしたりケースに静電気が貯まったりすると、周りの色々な人や物との間に電圧の差(電位差)ができてしまいます。 その状態で接触が起こればそこに電流が流れて感電や火花による事故になってしまいますが、機器のケースが予め地面にアースしてあれば、電流の大部分は一番流れやすいアース線を伝って地面に流れてしまうため、機器に触れるものとの間に大きい電流が流れるのを防ぐことができる訳です。 考えてみると避雷針もアースの一種ですね。

  は一般にノイズ対策と呼ばれ、音声や映像やその他の信号が周囲の諸々の電磁波などの影響を受けて雑音が入りうまく働かなくなるのを予防することです。 電気の専門教育の基礎で、電流が流れると必ずその周囲に電波や磁気が発生するということを習います。 逆に電波や変化する磁気の中にある導電体には必ず何がしかの電流が発生します。 つまり小さな信号用の電流は、近くを通る大きい(変化を伴う)電流の影響を受けるのです。 専門用語で「輻射ノイズ」と言われ、信号用電流の通路の周りをアースにつないだ導電体で広く取り囲んで影響を避けるようにします。
話がかなりギクシャクしてしまいましたが、今回で電気のシリーズを一旦終わり、疲れを休めてまた新しいタイトルに入りたいと思います。 長いお付き合いありがとうございました。


※このページで紹介したものを、収録編に保存してあります。どうぞご覧ください。→収録編

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